土曜の昼下がりに、あなたと

「私ね、こうして毛布にくるまって二人でまったりするの好き」

「そっか……確かに、いいかもな」


いつもなら、高哉はすぐに着替えてさっさと寝てしまうのに、やっぱり今日は特別みたい。

毛布の中で向かい合って、彼のいろんな話を聞いた。

例えば――。

新しい上司は自分にも部下にも厳しい仕事のできる人物であること。

いい意味でも悪い意味でも職場に緊張感があって、平日の帰宅後はくたくたなこと。

仕事は好きだしやりがいもあるけど、正直ちょっと無理をしている自分に最近気づいたこと。

それから――。

私とぎくしゃくするのは嫌なのに、どうしていいかわからずに悩んでいたこと……。


「私たち、これからはもっとたくさん話そうね」

「そうだな」


床には脱ぎ散らかした二人の服が落ちたまま。

テーブルの上のお茶は口をつけられないまま、すっかりぬるくなっていた。


「冴衣といると落ち着くな。特に今日は……なんだろう?不思議だな」

「それ、ひょっとしたらこの香りのせいかも」

「確かに、なんかずっと甘い感じの匂いするなぁとは思ってたけど……」

「フフフフ。これはただの香りではないのだよ、高哉クン。ワタシの念がこもっているのだからね」

「誰だよ……てか、念とか怖いんですが」

「怖くないもんね」


私は苦笑いする彼の鼻先に、ひょいと手首を近づけた。


「いい匂い、する?」

「ああ。ほっとする匂いなんだけど、なんか……色っぽいんだよな」


彼は私の腕をやんわり掴むと、手首に優しく口づけた。


「俺、消毒液臭い冴衣もけっこう嫌いじゃないんだけど」

「ええっ。何それ、初めて聞いたっっ」

「あ?そうだっけ?」

「そうだよっ。って……私ってそんなに消毒液臭いわけ!?」


そりゃあ職場が職場だもん。

いくら仕事着が別だからって、やっぱりどうしても……。

ああ、もうっ!ぜんぜん無自覚とか、すっごい恥ずかしいよお……。


「まあまあ、そう気にすんなって。いつもってわけじゃないし。ほら、ときどき疲れて服のまま眠りこけてるときとかあるだろ?そういうときだけ」

「気にするよ……ごめん」

「冴衣は冴衣のままでいいよ」


おでこがこつんとぶつかって、鼻と鼻が触れ合って、それから――ふわっと唇が重なった。


「いい匂いの冴衣はもっといいかもしれないけどな」

「うん……」


土曜の昼下がり、たっぷり甘い汗をかいた二人。

素敵な休日はまだまだ続く。

そして、想いを確かめ合った二人の"これから"も、きっと――。



【Fin】

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