満たされる夜



金曜日、部長の送別会のために課全体で早くに仕事を切り上げて、若手が予約していたという居酒屋の個室で呑んだ。

普段は若手と呑むことなんてまったくない。


「課長は仕事人間だから」
「あんなだから今も独身なのよ」
「お見合いしたって相手から断られるわよ」
「いっつもムスっとしてるし」


なーんて、俺の前では口が裂けても言わないであろうことをほざいている。
面と向かって言ってみろ。


「田崎、お前もうやめとけ。さっきの店から何杯呑んだ」

その声の方向を見ると、テーブルに突っ伏す社員がいた。


「んー?何杯かなぁ…大丈夫ですよ」

「大丈夫じゃねーだろ」


田崎めぐみ。まだ20代だったな…。
男の前でそんな風に酔っ払うのは危険すぎる。
どうなろうと、部下のプライベートは関係ないが。
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