満たされる夜
結局見捨てることも出来ず、眠った田崎を抱えてタクシーに乗った。
マンションの前に着いたときになって起きたものの、寝ぼけているのか何も言わない。
リビングに連れて行くと、倒れ込むようにソファに横になって伸びる。
白いふんわりしたスカートからのぞく、しなやかそうな脚。
田崎の不倫相手は営業部の奴だと言う。
どんな理由でそうなったのかは知らないが、不倫なんてする奴の気持ちは理解出来ない。
された奴のことなら分かるが。
「不倫なんてしてないで別れろ。まだ若いんだから、いくらでも男はいるだろう」
田崎はソファでうとうとしているようだ。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して戻ると、何を考えているのか、ぼーっと一点を見つめていた。
いつもの癖で何も考えずにネクタイを緩めて、ワイシャツのボタンを開ける。