満たされる夜
突き飛ばされるかも知れない。
問題になるかも知れない―――。


そんなことが頭をよぎりながらも、軽く唇に触れると止まらなくなった。

舌先で唇を舐めると、ぷっくりとした下唇の感触が気持ちいい。

田崎がわずかに口を開けたとき、すぐに咥内に舌を差し込む。



どちらのものでもある酒の匂いがする。


だけど、甘くて熱い。

咥内を隅々まで探る。歯、歯茎、上顎、そして舌をつかまえる。


「んんっ…」


こぼれる甘い声に一瞬にして理性を失くしそうになる。いや、こうしている時点で理性なんてないのかも知れない。


唇を離してから頬に触れると、田崎は目を閉じた。逃げるつもりはないようだ。
鼻の頭にそっとキスをしてから、手を引いて寝室に連れて行った。
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