満たされる夜
ベッドと大きな本棚、備え付けのクローゼット、壁にかかった時計、窓から入る月明かり。


あの夜と同じだ―――。



「男と別れてヤケにでもなってるのか」


課長はジャケットをハンガーにかけると、ベッドに腰をかけた。
私はゆっくり課長に近づく。


「ヤケになってなんかいません。そんなふうになるほど好きじゃなかったし…。
それより課長、あの日、私に嘘をつきましたよね?」


ネクタイを解いて、ワイシャツのボタンを開けていく。
途中で胸に触れると、心臓の鼓動が速い。
私にドキドキしてくれるの?


「嘘?」


少しつり上がっている課長の目がより一層キツくなる。

「私、憶えてます。抱かれたときのこと。課長はそのまま私の中に入ってきた。それは避妊にはなりません」
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