年下の彼氏が優しい件
照「今日は誘ってくれてありがとうな。本当なら、俺から誘わないといけなかったんだけど…」
『い、いや、折角連絡先を交換したんだし、どうせならお詫びでもと思って…』
そうだよ、私はお詫びをしたかったから、こうして高野さんとバイキングに行ったんだ。
折角買ったお詫びの品もまだ渡していない。
せめてこれだけはきちんと渡すべきだ。
言葉を止めた私を待ってくれているのか、高野さんは少しだけきょとんとした表情でこちらを見ていた。
『あの、ちょっと渡したいものがあって……』
鞄から出した、シンプルにラッピングされた、長方形の箱。
私はそれを高野さんに差し出すように、渡した。
照「え…っ」
『あの、これ…この前のお詫びなんだけど、大したものじゃないから。』
どうぞ受け取ってくれ、と差し出すが、高野さんはいや、流石にそんなに…となかなか受け取ってくれない。
照「それをされちまうと、俺はまた大谷サンにお礼しないといけなくなっちまう。」
そう言われても、私だって譲れない。
生憎、高野さんもそうかもしれないが、私だって頑固なのだ。
『それでも、私はこれを受け取ってくれないと納得できない。』
照「………。」
高野さんはやっと観念してくれたのか、
お詫びの品、もとい私の差し出すラッピングされた箱を受け取ってくれた。
照「ありがとう、大谷サン。」
ここじゃああれだから、家で開けるよ。
高野さんはそう言って、それじゃあ、と踵を返した。
照「気をつけてな。」
『うん。高野さんも。』
私も高野さん同様、自分の家に向かって歩き出す。
今日はご飯をご馳走になってしまった。
こうならないように、レジでどう説得するか、言葉をいくつも考えていたけれど、彼は私より一枚上手だったようだ。
私のあんな贈り物じゃあ申し訳がない。
少しだけ思案し、くるりと後ろを振り返った。
すると、
高野さんは、私たちが別れたあの場所から数歩しか離れていない所に立っていた。
思わず目があって、少しだけ口の端をあげて、フリフリと片手を上げる。
え、どういうこと…?
高野さんが歩き出したから、私も帰ろうと背中を向けたはずなのに…
あぁ、そうか…
『あぁ、もう、あの人今までに何人女の人を泣かせたんだろう。』
私が帰りにくくならないように自分が帰るふりをしたようだ。
しかも、あの様子だと姿が見えなくなるまであそこで見守っているつもりだろう。
『(どれだけ紳士なんだろう…)』
そんな人が、恋人を奪われて殴られるなんて、
なんだか少しだけ、その元恋人だった人を羨ましく感じた。
そういえば今日移動中もずっと道路側を歩いてくれていた気がする。
さりげなく色々な配慮をしてれた。
もしかすると、高野さんは童顔だけれど大分年上の人なのだろうか。
考えたいことと聞きたいことが増えたけれど、
取り敢えずは早く帰ろう。
そうしないと高野さんはあの駅前に居続けなければならないことになる。
そうして止まった足を再び動かし、私は帰路についたのだ。