Bloody Dance~姫と吸血鬼~
・もどらない記憶
「そういえばあなたの名前、私聞いていないわ」

「あぁ、そうだったな、俺の名前はチカ。」

「わかった、チカ様」


ローザは微笑む。
その笑顔にチカは心にチクリと痛みを感じた。


―そんな笑顔を俺に向けないでくれ


しばらく、不自然な間が二人の間に流れた。
紅茶を飲み干したチカは紅茶を注ごうと席を立ったとき、ローザが突然。


「あの、チカ様はもしかして怪我とかしているのですか?」

「なぜだ?」

「なんだか微かに血の匂いがする気がするの」

「……それは…多分お前の怪我だろう、今は傷は塞がっているが先ほどまでは血が流れていたんだ。まだ少々匂いが残っているのだろう、あまり気にするな」


ほんの少々焦った口調のチカ。
何かを思ったのか、ティーカップをカートに置き。


「もう寝ろ、今は仮にも夜だ。女性が起きているような時間ではない」

「…わかったわ、おやすみなさい」

「あぁ」


それだけ答え、チカはローザの部屋を後にする。


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