クライムハザード
 ★

 鑑識課までの道のりを、並んで歩く。

 俺の隣で、彼女はすまなそうに言う。

「すいません、荷物」

「いえ、構いませんよ」

 彼女が持っていた箱は見た目よりも重量があって、ずっしり重い。見た感じ華奢な体型なのに、意外と力があるみたいだ。鑑識って、案外力仕事なものだろうから、そうなのかも知れない。

「あ、申し遅れました。ぼく、鑑識課の卜部司(うらべつかさ)です。よろしくお願いします、金森さん」

 名札を見せながら、卜部さんははにかんだように顔を綻ばせた。

 女性なのに“ぼく”だなんて変わっている。警察って男社会だから、揉まれるとそうなるのだろうか。

< 50 / 105 >

この作品をシェア

pagetop