クライムハザード

「そういえば、鹿羽……警部補とは、お知り合いなんですか?」

 卜部さんは二、三度瞬きを繰り返し、ゆるく口角を上げた。

「ぼく、一昨年まで特派に居たんですよ。夜魅さんの元部下」

 思わず、手に持った段ボール箱を落としそうになった。

「……そう、だったんですか」

「ぼくね、自分で言うのもあれですけど、科学オタクなんです。学生の時分から指紋捜査とかルミノール検査とか、憧れてて。科学しか、取り柄がないんです」

 伏し目がちに、ゆったりとした口調で彼女は語る。その声は決して大きなものではなかったけれど、静かすぎる廊下では十分な声量だった。

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