触れて、抱きしめて、あなたのモノ
潤い
夜更けに亜美に譲ってもらったのは、ボディお手入れ用のジェル。顔だけには少し気を使っていたけれど、ボディに関しては……今まで意識したことなんてなかった。


それで彼から言われたあの一言。正直ショックだった。あんな事を言わせたのは、今までの私の怠慢が原因。それなのに彼に当たるようにして、飛び出してきたことを後悔し始めている。


けれどここまで来たら、もう後には引けない。大地さんが触れたいって思ってくれるお肌を目指す事にする。そのために亜美に相談したんだ。


美容に関してすごく貪欲な親友が居てくれて感謝。亜美がよく言っていた、身だしなみは思いやりだって言葉が今回よく分かった。


お手入れの仕方以外にも色々と助言をもらった。入浴方法とか、あとは食事のこと。


不規則な時間に食事をすることは、仕事上変える事はできない。だから、食事内容を見直した。不足しがちだった野菜類も積極的に食べるようになった。


入浴はというと、シャワーでパッと済ませていたのを、浴槽に浸かるように意識した。そして、最後の仕上げが例のボディジェル。お風呂上りに、お肌をマッサージするようにしっかりと塗りこんでいく。




……驚いた、こんなにも効果が現れるとは思っていなかった。


彼の家を飛び出してから約1週間。たったそれだけの期間で自分でもはっきりと分かるくらいに、お肌の調子がいい。あの日彼に撫でられたカサカサだった腕も、滑らかしっとり。


これなら、もういいかもしれない。


まだ早いかもしれないけれど、私もそろそろ彼に会いたくて堪らない。私のわがままでこれ以上彼と距離を置いてしまうわけにもいかない。大地さんに触れてほしい、触れたい、抱きしめて欲しい。欲求がどんどん膨れ上がっていく。


そろそろ、会いに行こう。
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