あたたかい場所
「それ、あげる」
「え?僕に?」
「あんた、忙し過ぎて忘れてんちゃうの?」
「え?」
「来週、誕生日やん」
美紗にそう言われて、思い出した。
僕は七月で二十三になるんだった。
美紗の言う通り、忙し過ぎて忘れてしまっていた。
「くれるの?」
「あげるゆーてるやん。ありがたく受け取り」
お礼を言うと、美紗はじゃあまたな、とだけ言って歩き始めた。
美紗の後ろ姿を見送っていると、すぐに振り返ってこう言った。
「うちの時は、五倍にして返してな!」
と。
やはり美紗は、美紗だった。