あたたかい場所
「彩芽じゃん。ちょっと来い!」
神田さんに呼ばれた彩芽さんは僕のデスクに近寄ってきた。
何ですか?と首を傾げる彩芽さんに、パソコンの画面を指さして神田さんが説明した。
「この飲料メーカー知ってるよな?」
「知ってますよ。このぶどう味すごい美味しいの」
画面に映る商品紹介の文字の下のペットボトルのアイコンを指さす彩芽さん。
神田さんははいはい、と適当に返す。
「そんで、大阪でこのメーカー主催のフェスがあるから出るぞ。
日程は約一ヶ月後。それまでに、このメーカーのテーマ曲を作れ」
「テーマ曲!?」
いきなりの事に驚いている彩芽さんをよそに、神田さんは話を続けていく。
「だけどメーカー側に送らなきゃならないから時間は三週間。
それまでに曲を作れ。歌詞もな」