あたたかい場所

「俺、今から軽井沢に行くんだよ。いいだろ?

国民的バンドはやっぱ違うよなぁ」

そう言った伏見の顔を見ると、また元のにやけ顔に戻っていた。

なんだか不謹慎だから言葉にはしなかったけど、

今回のスクープで伏見の収入に大きい変化があったんだろうとは思っていた。


もちろん、いい意味の方で。

軽井沢へ旅行へ向かう前に、MISAの状況を偵察に来たというところか。

確かに伏見の手には、普段の荷物にしては大きすぎるボストンバッグが握られている。


「じゃあ俺はこの辺で。新幹線に間に合わないからね。

MISAによろしく~」


去り際の一言に刺激されているのが伝わる。


僕は伏見の姿を見送るわけでもなく、裏口から事務所へと入った。
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