あたたかい場所

ジャケット撮影の場所は湘南の海。

朝の爽快感のある海で、というのが撮影スタッフ側の提案。

朝6時半に事務所の前にマイクロバスで向かうと言われたので、その時間までには事務所でメンバーと合流しなければならない。


僕が6時ぴったりに事務所に着くと、既に翔さんが事務所の中のソファーでコーヒーを飲んでいた。

僕も自分でコーヒーを淹れ、ソファーで翔さんと話していると、すぐに晴輝さん、彩芽さんがやって来た。

腕時計の長い針が“4”を指さし、あと10分でスタッフが到着するのに美紗が来ないことに僕もメンバーもソワソワしていた。



「ギリギリやな、ごめん」
美紗が事務所のドアを開けたのは、6時25分になる頃だった。

ギリギリで焦ったけど、ゆっくり話す時間がなくてホッとしているのも事実だった。


1週間ぶりに見た美紗はすっぴんだからかゲッソリとしているような気がした。

ジャケットから伸びる手首は細く、弱々しい。


ロクにご飯食べてないんだろうな…


今日は湘南で美味しいものでも食べよう。

きっと撮影は朝のうちに終わるし、うん、そうしよう。
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