素直じゃなくて何が悪い


「ありがとう、助けてくれて。」


「いや、別に...」


あぁ、冷めてる。彼にしてみたら食べられそうな魚を助けたり、迷子の子供を迷子センターに連れて行ったりするのと同じような行為だったのかな、私を助けたのも。


自分で言って少し悲しくなった。


「あんまり一人になるなよ」


「どーせ私は迷子ですから」


「はっ?」


あ、心の声が!


「ごめん、なんでもない、ごめん!
じゃあ私戻るね!」


と言って戻ろうとしたら食い気味で工藤くんに


「バカっ!!」と言われて首根っこを捕まれた。いつの間にか繋いだ手は離されてたようだ。


「今戻ってもさっきと同じだろ!もう少しここにいろよ!」



工藤くんがこんなに感情出すなんて珍しいと、何故か冷静に彼を分析し始めた私だが、素直に従うことにした。



そこもちょうど木陰だったので、私が腰を下ろすと、なぜか工藤くんも私の隣に腰を下ろした。



少し驚いたが、いつもより近い距離にドキドキしながら2人で無言ではしゃぎ回るみんなを見ていた。

なんだか私達のいる場所だけ、切り取られたみたいに静かで、2人だけの世界なような気がして、とっても嬉しくなった。







結局、自由時間の間、工藤くんは私のとなりにいてくれた。


後で突然消えた私を心配してたら茶髪くんに絡まれた詩帆にこっぴどく怒られ、帰りの荷物持ちをさせられたのはいい思い出としておこう。

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