素直じゃなくて何が悪い
午後の眠い授業をなんとかこなして放課後になった。
私は吹奏楽部の詩帆と別れて、放送室に向かう。ここで、生徒が全員放課しなければいけない時間まで待つのだ。
そして放課の放送をして、部活を終えた工藤くんと待ち合わせて帰るのが私の日課。
放課までの2時間。私は宿題を終わらせたり、その日の授業の復習をしながら放送室で過ごす。
飽きてくると、窓際へ向かう。
そう、私が放送室で2時間を過ごすもう一つの理由。
放送室の窓から、工藤くんが見えるのだ。
相変わらず彼はかっこいい。
走る彼は、風でいつもは長い前髪で隠れている顔がはっきり見える。
走る彼は、いつもは眠たそうな顔しかしないくせに、すごく真剣な表情をしている。
走る彼は、いいタイムが出たときには、笑い、上手くいかないときは、すごく悔しそうな顔をする。
彼のポーカーフェイスを崩せるのは、陸上だけだ。
そう考えるたびに、どこにぶつければ良いのか分からない嫉妬心と戦わなければいけなくなる。
「必死だな...、わたし。」
思わず苦笑して、工藤くんから目を背ける。
工藤くんは、私のことをこんなに真剣に考えてはいないだろう。
というか、好きと言ってもらった記憶がない。
毎日一緒に帰るだけの友達...、えっ、友達!?
いや、たしかに3ヶ月前に、お付き合いしましょうと言われたはずだ。
あぁ、不安になってくる。
自分ばっかり必死で、いつも工藤くんに振り回されてる自分が、どうしようもなく惨めに思える。