初彼初狼

 狼の 翻弄


まだ週半ばだというのに、話に付き合ってくれた学生時代の友人に感謝をして

それどころか 岡野主任との出会いを叶えてくれた大学や 自分の運命にも感謝して


ああ 今日はどんな顔をして会社へ行こうか、と浮かれていた私に待っていたのは

『神戸 ちょっと良いか』


上司の顔をした、岡野主任だった。

『頑張って!』

先輩の言葉を引きつった顔で聞いて。


主任のデスクの前まで行った瞬間

『先方から連絡があった。先月の請求書 まだあがってないらしいじゃないか。』


先月 請求書 

同じ言葉が脳内をぐるぐる回って


自分がスッカリ忘れていたことを思い出した。

「すみません。」

失態だ。

『今日 打ち合わせで俺が行くことになってる。
 神戸 お前も来い。』

・・・え?

『返事』

「はい!」


初めて お客様の元へ行くのに
初めて 主任と出かけるのに

よりによって 主任に 尻拭い


浮かれていた自分に渇を入れたくなったと 同時に

『任された仕事を ちゃんとやってくれ。』

小声だったけど、しっかり届いた主任の言葉がずしりと来て。

まるで昨日のことは夢だったんじゃないか と思った。
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