初彼初狼

無言でパソコンに向かう。

『神戸ちゃん これも入力お願い出来る?』

「・・・ハイ。」

『神戸ちゃん 悪いんだけど お客様見えてる。お願い出来る?』

「すぐにコーヒー入れてきます。」


先輩達の頼まれごとも こなしながら。


一人前に仕事が出来なくて
何故自分は文句が言える?

マコが羨ましい なんて 何故


私を引き受けた 主任 何故


考えがぐるぐる巡って 自分の存在意義まで達したところで

『神戸 そろそろ出るぞ。』

主任の声が耳に届いた。

「すぐに行きます!」


行きたくない。

あれほど外に出たかったけど 今は行きたくない。

主任の前で 頭なんて 下げたくない

なにより それより 主任の謝罪を 見たく ない


泣きそうになりながらバックを持つ。

『行くぞ。』

目に涙が少したまる。泣くもんか、と必死に堪える。

一瞬笑顔になった主任に 気がつきもしない位に。
< 15 / 21 >

この作品をシェア

pagetop