初彼初狼

『車で行くんですか?』

社で借りてる駐車場に着いた時に、気がついた。


『ああ・・・さっき製造チームに積み込みして貰ったから。それの納品も兼ねて。まあ、土産だ。』

はあ・・・


『神戸。俺は入社して3日目には営業先に挨拶に行った。』

車に乗り込み、エンジンをかけた瞬間に、主任が口を開く。


3日・・・
早い。早すぎる。
研修制度がしっかりしているうちの会社で・・・


『俺中途だからね。』

・・・初めて、聞いた。


『知らなかった?』

そう言って、パーキングから出る時ちらっとこちらを見た主任は

『やらかしまくって、それから説教。その後3ヶ月は行かせて貰えなかった』

ははっと声に出して笑った。


そんな事があったなんて、初めて知った。
主任はいつでも完璧で。

それに

声 出して笑った。


『なにぼーっとしてんだよ。』

そんな声 どこから出したの って不思議な位優しい声で言うものだから

『危ないだろ。』

いつの間にか、袖を握っていた。
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