妖精と精霊と人間と

 三階の部屋に着いた。真っ暗なその部屋では、一つの小さな窓から降り注ぐ青白い光が唯一の灯りだった。その暗い部屋の奥から、灰色のシルエットが近づいてきた。冷静沈着なラーグウェイの動きがピクッと止まった。北斗と美咲はその異変に気付くと、灰色のシルエットを睨みつけた。灰色のシルエットが前進してくると、徐々に徐々にその姿が月明かりで明らかになってくる。ラーグウェイの目に、その灰色のシルエットがハッキリと映ると、彼はガックリと崩れ落ちた。
 「姉さん・・・」
 ラーグウェイのその言葉に、美咲と北斗はその灰色の影をしっかりと見すえた。背が高く、青褐色の肌に銀色の髪、人を誘惑するかのような服、北斗は人目でそれがダークエルフだと解かった。月の光で、その姿はハッキリと映し出された。
 「姉さっ―――」
 「ラーグウェイ!あれは、ラージェルじゃない!・・・お前の、姉じゃない。」
 北斗がそう言うと、ラーグウェイは我に返ったかのようにいつもの瞳で姉を見つめた。
 「北斗、美咲・・・先に行ってくれ。」
 「拒否権発動しまぁす・・・・・ここに居るよ。」
 ラーグウェイの後に、きっぱりと美咲はそう言うとふっと微笑んだ。彼も安心したのか、その目がスッと優しくなった。
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