妖精と精霊と人間と
 「北斗、美咲。先に行っていてくれ。すぐに行く。」
 二人に背を向けた状態で、ラーグウェイはそう言った。その身体が小刻みにゆれている。残光となった姉の亡骸が、その涙で濡れているのが解った。
 「・・・ああ。」
 「明を止めているから!」
 北斗がそう言うと、美咲も頷いて北斗の後に続いて階段をのぼった。
 「四大元素の精霊が一人、火の精・サラマンダー。我の問いかけに答え、その真の姿を我の前に示せ。」
 ラーグウェイがそう言うと、彼の目の前が紅に光り輝いた。その光の中から、一人の青年が現れた。美しい瞳と髪をもった青年であった。
 「サラマンダー・・・俺も、直ぐに姉さんの後を追うよ。」
 「解かった。俺だけを呼んだという事は、俺をどうするつもりだ?」
 「・・・・・悪いな。」
 「次は、小さな魔法使いか。」
 「嗚呼・・・・・四大元素の精霊が一人、火の精・サラマンダー。今より、我との契約は無効となる。共に生きてきた時の記憶、精霊の誓約には反するが残す事とする・・・リーヴ。」
 ラーグウェイが小さく呟くと、サラマンダーはトカゲの姿になって空気中ではじけ飛んだ。次ぎの主の元で、最大限に力が発揮できるように。
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