妖精と精霊と人間と
 彼を見ると、デントは口を開いた。その表情は、信じられないと言った様子だった。
 「ディゴリス・・・お前は死んだ!美香が止めを刺したはずだ。」
 ディゴリスと呼ばれた青年は、デントを見下した。
 「久しぶりだな、哀れなセリアのオークよ。あれは、私の分身だ。」
 「そんな・・・お前は、いつの間に起きたんだ。」
 デントとディゴリスは、二人であの美しい低音で話していた。北斗にもリデロにも、ましてや、あの美香と明にも、彼らが何を言っているのかは解っていた。
 「五百年前さ。」
 その言葉に、皆が落胆した。五百年前と言えば、丁度、闘いのキズも癒え、人々が平穏に暮らし始めた頃だ。そんな中で、ディゴリスは復活していたのだ。一部の、自分の信者の下で。
 「デント、思い出した。でぃごりす、二五〇年、起きる。二五〇年後、寝る。ディゴリス、今回、寝なかった。本人、そう言って、いる。」
 その言葉に、美香と明も含めた皆が落胆した。言葉も出なかった。五百年という長い間、誰も彼が起きていた事に気が付かなかったのである。
< 187 / 218 >

この作品をシェア

pagetop