妖精と精霊と人間と

第二十八話 墓石~リデロの場合~

 デントがイオにまたがり、セリアのオークの元へ帰って行くと、リデロもナキを呼んだ。
 「じゃあな。もう、会うことは無いだろう。美香、明。元気で、な。」
リデロはそう言うと、ナキにまたがり走り出した。何も振り返らずに。

 モリアの鉱山に帰ってくると、リデロはバラコスタ・ドランが住む、コモンドークに向かった。山のふもとにあるその工房は、ありえないほどの熱気を帯びた蒸気を噴出していた。離れていても、その熱さが感じられるくらいだ。
 コモンドークから立ち上がる蒸気が、顔に触れるくらいに近づくと、叔父のバラコスタが出迎えてくれた。
 「久しぶりだな、リデロ。」
 「お久しぶりです。」
 ぺこりと一礼すると、バラコスタは彼を家へと案内した。工房の奥にある扉を開けた所に、彼の家がある。目の前に、大きな木製のテーブルがあり、備え付けの椅子が二つ。その奥に、台所がある。そして、右側の扉の奥が叔父の寝室で、左側の扉は物置になっていた。左側の扉の横にある時計が、ボーンボーンと時を刻んでいる。
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