妖精と精霊と人間と
 「ディアッカ。一つ聞きたいんだが、良いか?お前は・・・姉さんの居場所を知っているのか?」
 ラーグウェイは、ディアッカにつめよりそう聞いた。ディアッカは顔をふせると、小さく呟いた。
 「残念ながら。だが、風の噂で聞いた事がある。樹木たちが、呪われし渓谷に向かった、と・・・」
 「呪われし渓谷・・・・・・そこに行った者は誰一人帰ってこず、どんな花も枯れてしまい、ただトリカブトとキョウチクトウの花だけが咲いていると言う、あの・・・沈黙の森に、か?」
 ラーグウェイはそう言って、愕然として座りこんだ。姉が何故そんな所に言ったのか、おおよその見当がついて来たからだ。
 キョウチクトウは夾竹桃と書き、薄いピンク色の透き通った紙のような花をつけ、枝も葉もほっそりとしているが、その花全体が毒を含んでいる植物である。その毒は有害で、食べると食中毒になると言われている。
 トリカブトは、秋に青紫色の美しい花を突け、生け花にも使われる。トリカブトの根には強い毒が含まれていて、人間が口にすると息が出来なくなって死ぬこともあるという。トリカブトは、ウズ・ブシなどの漢方薬の元にもなっている。
 「キョウチクトウ・・・花言葉は、注意・危険。トリカブトは・・・人間嫌い・復讐。」
 ブラウンはそう呟いた。ラーグウェイは確信した。姉がどうしてそこに行ったのかを。人間への復讐である。
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