妖精と精霊と人間と
 「ディアッカ・・・絶対絶対に、キャッツアイは取り戻すからね!」
 美香がそう言うと、ブラウンは砂の山になったところに一株の花を植えた。ワスレナグサの花を。空より青いその花を。明はその場に跪くと、剣の矛先を土に射しこう書いた。『Forget Me Not』。私を忘れないで、と。美香は泣いていた。ラーグウェイも、その涙を見せずに泣いていた。初めて味わった、『死』の味だった。この世界では、友は砂になって死ぬのだと言うことを、初めて実感させられた出来事だった。ブラウンも、ノースも、ラーグウェイも、この世界に居る限り砂となって死ぬのだ。骨なんか残らない。文字通り、土に返るのだ。
 「皆、行こう!まずは、モリアの鉱山だ。」
 北斗はそう言って、美香をその背に乗せた。泣いたまま歩けるほど、美香は器用じゃない。
 ラーグウェイは、花畑を抜けると後ろを振りかえった。青い花が月明かりに照らされて、こちらを向いている。それはまるで、ありがとうと微笑んでいるかのようだった。
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