妖精と精霊と人間と
 美香はその話しを聞くと、生け贄の女の子のいる家に向かった。誰の言葉も聞かずに。自分より一つ二つ年上の娘は、きりりとした表情で美香を迎え入れた。
 「なんのご用ですか?」
 一身の迷いも無いその声には、村を守りたいと言う儚い願いがこもっていた。美香は娘に近寄りこう言った。
 「私が変わりに行くから!お願いだからやめて!自分を犠牲にしないで!!」
 そんな美香に、娘はにっこりと微笑んだ。
 「しかたないのですよ。もう行って下さい。変えられない、運命なんですから。」
 「違う!そんなの間違っているよ!運命は自分で造るものだもん!誰かが創ったレールの上をいくのが運命じゃないよ!そんなの、絶対違うよッ!!」
 「それくらい私だって解っています!もう、やめてください・・・帰って下さい!!」
 娘はそう言うと、家から美香を追い出した。美香は村の宿に戻ると、部屋のベッド上に突っ伏した。そして、ぽろぽろと涙をこぼしながら呟いた
 「どうすればいいのさー・・・助けたいよ、あの子。カワイソウだよ。」
 「美香。しかたない。しかたないんだ。」
 「でも・・・っ!」
 ラーグウェイの言葉を聞いて起き上がったが、その目を見ると何も言えなくなった。多種多様な民族や種族が暮らすこの世界では、民族の宗教への意見が戦争を招く事もあるのである。だから、この世界に住んでいるラーグウェイたちは何も言えなかったのである。
 「美香!救ってこいよ。俺達が、後は何とかする。」
 明は、美香の頭を撫でながらそう言った。
 「そうだね・・・行って来い、美香!」
 北斗もそう微笑む。彼女の性格を知った上で、自分たちの実力も解っているからこそ、言えたセリフである。
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