あふれる涙のドロップス

「よいしょ」



 
 七瀬さんが、自販機で買ったきた冷たい水の入ったペットボトルにハンカチを巻いて、アタシのアザに当ててくれる。






「……ありがとう」






「ううん、いいのいいの」






 七瀬さんはニコッと笑って、腕のかすり傷に、星柄のバンソウコウを貼ってくれた。






「葉山くんがね、頑張ってくれたんだよ」





 そう言いながら、手際よくペットボトルの中の水をハンカチにこぼすと、絞ってアタシの顔に、もう一度当て直した。






「他中の先輩に殴りかかってね、こう叫んだの。『南になにするんだ!』って」





 
 カッコ良かったよ、とアタシに告げた。






「いい人だよね、葉山くん。南さん、どう思う?」





 
「え、アタシ?」





 いきなり話を振られてびっくりした。




 

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