テイク ラブ
わあ…。見事になにもなし!どうしようかな…。
冷蔵庫の中を見て口をポカンと開けたあたし。
「買い物くらいしててよー、お母さん」
空っぽな冷蔵庫から、ミネラルウォーターを取り出してコップに注ぐ。
はあ…。男の子の北人の家の方が、お菓子とかジュースとかいろいろあるってどういう事よ?
北人のお母さん、えらいよ。うちのお母さんとは大違い。
「沙智?なにしてんだよ」
足音も立てずにあたしの後ろから北人が現れる。
「うっわ!びっくりした…」
心臓がバクバクと動き出す。
北人が突然現れたドキドキと、北人自身にときめくあたしの心。
うるさくてうるさくて…北人の声すらうまく耳に入ってこない。
「沙智?大丈夫かー?」
ひらひらとあたしの顔の前で、北人が手のひらを振っている。
「大丈夫、大丈夫」
勢いよく頭を縦に振って、頭をクリアにしたかった。
ダメダメ、北人に触れてみたいとか…そんな事考えちゃダメ。
「沙智、冷蔵庫開けっぱなしにしてると金逃げてくよ?」
……君は主婦ですか?北人。
フウっと息を吐き出して、北人の顔を見る。
「なに?」
改めて顔を見られた北人は、すごくびっくりした顔をしている。
そんなにびっくりしないでよ。
「北人……」
「…なに?どうかしたわけ?」
