君と歩く未知
 駅のホームで手を繋ぐ親子…男の子の小さな手を守るように包み込む母親。
男の子も母親もニコニコして幸せそうだ。
『お母さんの手は暖かいの?』
思わず男の子に問いたくなる。
『息子さんを愛しているの?』
思わず母親に当たり前のことを問いたくなる。
…アタシのお母さんの手もあんな風にアタシのことを守ってくれていたんだよね。
だけど、アタシはそのお母さんの愛情にちゃんと応えてあげられなかったなぁ。
最近お母さんの前で、あの男の子のようにニコニコ笑ってあげていないな。
お母さん、寂しかったかな。
心配したかな。
家に帰ったらめいいっぱい笑ってあげよう。

 線路で立ち止まって、時計を気にしながら携帯電話で話をしているサラリーマン風の、中年の男の人がチラッと見えた。
忙しそうに、働いている…。
それは、きっと家族のためなんだよね。
アタシのお父さんも、アタシが立派に育つようにって一生懸命働いてくれていたんだよね。
それなのに、アタシはお父さんを追い詰めてしまった。
あの頃のお父さんは、きっと色々悩んでいたはずなのにアタシは理解してあげられなかった。
そのうえ、チャット嬢のバイトを始めてしまった。
いくら大学進学の資金だって言ったって、娘がこんなバイトしていたら、お父さん悲しむよね。
もう、チャット嬢なんてバイトやめよう。
それから、お父さんのお葬式以来アタシは一度もお父さんのお仏壇にお線香をあげていない。
帰ったら一番にお父さんに顔を見せてあげよう。
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