君と歩く未知
友達って呼べる人
 カズくんが合作をしようと言った日からアタシたちはますます忙しくなった。
そんな忙しい毎日にはすっごく充実感があった。
何かを人と協力して作り上げるのって、アタシが今まで経験した何よりも楽しいんだね。
そんな充実した日々のおかげか、それとも時が経ったからか、アタシは次第にカズくんが家でアタシに内緒で絵を描いていることを気にしなくなっていった。
気にするほどのことではないような気がしてきたんだ。
夏休みに入ると、アタシたちは補習にほとんど欠席して絵を描いた。
夏休み明けのテストはきっと二人とも散々だろう。

 「弥生、スカイブルーの絵の具切れたんだけど」
カズくんはそんなことを言いながら、この部屋の棚という棚を開けてまわった。
「えー、もうなくなったの?だっておととい新しいの開けたばっかだよ」
あたしは額にかいた汗を腕で拭いながらカズくんに言った。
この部屋にはもちろんクーラーが設備されていない。
カズくんの家から持ってきてもらった扇風機が二台、アタシの家のは一台、そしてカズくんとアタシがお金を出し合って買った安物が一台。
この小さな部屋には計四台の扇風機が置いてある。
「もうホントに暑いんですけど…ってゆーかさ、部費で扇風機買えねぇの?」
「無理だよ。ほとんどアタシたちの絵の具代になってるじゃん」
カズくんはスカイブルーの絵の具を探すのをやめて扇風機の前に立った。
「あ~つ~く~て~と~け~る~~~~!」
そんな間抜けな声を扇風機を通して発しながらカズくんは扇風機に抱きついた。
アタシはそんなカズくんを見て少し笑った。

 その時、この部屋のドアが勢い良く開いた。
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