好きと言えなくて
私の帰る場所
「小さい店言うても、ワシかって社長や。従業員のことは、把握してるつもり」

私が正義と付き合ってること、社長は知っていたんですね……。このヘルメットが私の物やってことも……。

「今日はこれからそこの丼モノ屋に行って、バイクでドライブやって! 若いモンは、ええなぁ」

社長は、ひとり言のように小さく呟いた。

「ほな、お疲れさん」

「あ……はい。お疲れ様です……」

社長が駐車スペースから店のほうへと歩いて行った。私は、安心感のある広い背中を見送った。

そして、正義のバイクに隠れるようにして、駐車スペースのすみっこに座った。

正義がプレゼントしてくれたヘルメットを抱えて……。
< 42 / 93 >

この作品をシェア

pagetop