好きと言えなくて
五年目の春
「若葉、おめでとう!」

春……桜が満開の小さな教会で、高校時代からの友人である、若葉が結婚式を挙げた。

若葉、すみれ、華、葉子。四人は、高校時代からの友人。すみれは、二歳の娘がいて、華は、妊娠三ヶ月。独身の私には、左手薬指のリングが輝いてみえる。

「残るは、葉子やね。彼氏と結構長いんちゃうの?」

「五年目」

「五年目? ほな、そろそろちゃう?」

「なにが?」

「結婚!」

すみれと華が、私の顔を覗きこみ、声を揃えて言った。

「彼氏はともかく、葉子は考えてるんちゃうの?」

目の前の、新郎新婦に目を向ける。私が純白のドレスを着て、正義がスーツを着る……。想像しただけで、笑えた。

「いやあ、考えてなかったわ」

「まぁ、結婚がすべてじゃないし、結婚せーへんカップルもいてるしね」

「ただいまより、ブーケトスをいたします。次に結婚したい女性はぜひゲットして帰ってくださいね」

司会進行のお姉さんが、明るい声でアナウンスをした。

「ブーケトスやって、葉子!」

「私は、ええよ……」

遠慮する私の背中を、二人が押した。

「せーのっ!」

元ソフトボール部のエース、若葉が投げたブーケは、ギラギラする独身女子たちの頭上をかすめた。みんなが追いかけた視線の先で、ブーケをゲットしたのは……。
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