優しくないっ、優しさを感じない!


ーーそれは、始業式の帰り道。

体育館から戻ってきたら、あたし達の教室の前に見知った人影があった。

そしてその人影はあたし達に気がつくと、嬉しそうに顔を綻ばせる。


「霧野さん!これ持って来た!」


……違う、あたし達にじゃない。あたしの隣にいる…レナちゃんに、だ。


「え?あ、もしかして、この間言ってた…」

「そ!例のブツです」


そう言って手渡されたそれをレナちゃんは、感謝の気持ちを一杯に詰め込んだ表情で、声色で、そっと受け取った。


「ありがとう、中村君…!」


それは一枚のCDだった。「すぐ返すね!」と、まじまじとそれを眺めながら嬉しそうにレナちゃんが言うと、「いや、いつでもいいからさ」なんて、コースケが微笑みながら爽やかに答える。

…そんなレナちゃんとコースケのやり取りを眺めていたら、あたしは思わず声をかけていた。


「…何?それ何のCD?」


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