優しくないっ、優しさを感じない!


なんて、慌てて変な意味では無いんだと弁解した。だって本当に思ったんだ。あんな経験初めてだった。だからもうこの気持ちはあたしの中にしまって置くべきじゃないと思って、だからもう反射的にというか直感でというか、中村 コウスケの姿を見たら今だ!ってなって…


『…おう。ありがとう』


そう、少し照れたように笑った中村 コウスケは、あたしに向かって言った。あたしの勝手な熱弁に笑って答えてくれた。

それを見て、そう言って貰えて、あたしは自分の中でいつもの気持ちと…もう一つ、ドキンと何かが反応する。


『……うん』


…胸が締め付けられるような感覚…これは何だ?


話している最中から慌ただしく動き回っていたあたしの中の感情。それに今、胸がギューっとなる分からない何かが増えた。

あの日からあたしの中は色んなものが一杯だと、もう手が付けられないくらいだと、去っていく中村 コウスケの後ろ姿を見て思う。


あの日見た後ろ姿、それが今そこにある。それはあの日と同様に、あたしには他の人とは全く違うものに見えてーーその姿ははっきりと、あたしのまぶたの裏に焼き付いて離れなかった。


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