マルカポーネの心配事
由紀とその男は
ゲージなどペット用品を大量に買い込み
移動用キャリーに俺を入れ
広めのワンフロアのアパートに到着。

「私は森崎由紀。日中はお仕事していて、寂しい思いをさせてしまうけど、その分たくさん可愛がるからね」

男がゲージを作っている間
由紀は俺の毛並みを優しく撫でる。
その撫で方、合格。

「よし。これで完了。じゃぁ帰るから」
男は力仕事を終え
スーツのジャケットを手にして由紀にキスをした。

「ごめんね土曜日なのに」
白いラグに座ったまま
申し訳なさそーに
寂しそーに
由紀は男を溶けた目で見つめた。

「いいんだ」
優しい声を出し
男は部屋を出て行ってしまった。

ずっと玄関を目で追う由紀。
飼い主の不安はペットに直通。
ペロリと小さな指を舐めると「くすぐったい」と笑い出す。

笑った顔
可愛いじゃん。
あいつお前の男?
イケメンじゃん。
シェパードに似てるぜ。

「彼は忙しい人なんだ。ハウスメーカーの課長でね、土・日も忙しいの。今日はキミを買う予定があったから無理やり時間を作ってもらったの」
男を語る由紀の目が輝く。

幸せそうだからいいかーって思ったけど、なんつーか幸せボケって感じしてんだよ。嫌な感じはこの時からあった。

「顔が良くて優しくて、私だけを大切に思ってくれる人なんだよ」
きゃーってテンション高い由紀だけど

その2週間後

男に妻子がいた事が発覚し
破局。

土・日は家庭サービスで由紀に会えなかったそうだ。

「気付かなかったー!」
号泣するけど

ふつー気付くだろ。
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