ユーダリル

「は、はい」

「家に着いたら、何か食いたい」

「私が作ったのでいいのですか?」

「僕以外に、誰が作るの?」

 その言葉に、ユフィールの頬が赤く染まっていた。

 ウィルは病人であり、無理に料理を作らせるわけにはいかない。そうなれば、ユフィールが作るしかない。しかし、問題があった。それは料理の練習をしているが、病人の食事を作った経験がない。

 だが、作れるのはユフィールしかいない。それに、ウィルの頼みごと。ユフィールは意を決すると、作ることに了承した。

 それに、今回は失敗するわけにはいかない。病人相手に不味い食事を作ったら、ますます具合が悪くなってしまう。だからこそ、今まで以上に気合が入る。そして、ポイントを稼がなければならない。

「薄味は、困るな」

「でも、ウィル様は……」

「流石に飽きた。このようなことを頼めるのは、ユフィールしかいないから。他の人達だと、煩く言われる」

 その言葉に、ユフィールの身体がピクっと反応を見せた。「ユフィールしかいない」それは、これ以上ない言葉だ。信頼されている――そう感じ取ると、大きく頷く。そして、ウィルの好み通りに作ると宣言した。ユフィールにしてみたら、ウィルに喜んでもらえればそれで良かったのだ。

「有難う。ああ、それとディオンの食事も」

「好き嫌いは、ありますか?」

「特にはないよ」

 そう言うと、身体を震わす。どうやら本格的に熱が上がってきたようで、頬が真っ赤に染まってしまう。それを見たユフィールは大きな包みの中からマフラーを取り出すと、ウィルの首に巻く。

 それは、ユフィールがプレゼント用に編んでいたマフラーであった。このような形で渡すとは思ってもみなかったが、結果的に渡せたことにユフィールは嬉しそうであった。

 一方そのような裏事情があることを知らないウィルは、ただ感謝の言葉を発し暖かさに満足する。

 そして二人は、ウィルの家へと向かう。




 無論、ディオンはユフィールが来ることを嫌った。だがウィルが病気だからと、珍しく辛抱する。
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