ユーダリル
以前、ユーダリルで養蜂を行っていた人物がいたが、地上とは勝手が違う。お陰で蜂を全滅させてしまい、散々な目に遭ったという。それ以降、ユーダリルでは養蜂が行われなくなってしまった。
売られている蜂蜜の値段は、庶民が購入できる金額ではない。蜂蜜は憧れの存在であり、プレゼントには最適な物となった。しかし、アルンには関係のないこと。有り余る金で、大量購入を行っている。その為ユーダリルの蜂蜜の大半は、ラヴィーダ家で消費されている。
「兄貴、わけてくれないかな」
「難しいかもしれません」
「ケチだしな」
「頼んでみたら、いかがでしょう?」
「聞いてくれるか」
「ウィル様がお願いしたら、聞いてくれますよ。アルン様は、ウィル様に対しては優しいですから」
「そうかな?」
食べ物に関しては、予想以上に厳しい一面を持っている。何より、食に対しては煩い。美食家というわけではないが、執着心は高い。以前のチーズの件といい、食べ物のことでアルンと揉めたくないと思うのが心情であったが、ウィルが蜂蜜が欲しいことには代わりない。
金を出して購入――アルンとの金銭のやり取りは、とても危険であった。下手をすれば、必要以上の金額を吹っ掛けられてしまう。ましてや借金など、言語道断。一般的な利息以上の金額を取られ、毎日のように借金を返済するように言われる。これでは、仕事にならない。
なんにせよ、無料で蜂蜜を手に入れるしかない。また特別なルートを使い、独自に仕入れる。
だがアルンは、知られざる情報網を持っている。勝手に仕入れたとなれば、何と言われるかわからない。
「弟に対して、優しさを見せてほしいよ。まあ、結婚すれば少しは優しくなるかな。セシリアさんは、シッカリしているし」
「お姉ちゃんは、優しいです」
「そんなセシリアさんは、兄貴の何処を好きになったのか。いまだに、理由がわからないよ」
「素敵なところと聞いています」
それは、意外な内容であった。その為、ウィルは大笑いをしてしまう。だがその反動で咳き込み、ユフィールに背中を擦ってもらうことになってしまう。だが、笑いは止まらない。