ユーダリル

「嘘ではない」

「アルン様の言葉は、信用できません」

「いつも信用しているだろう」

「信用は、しております。ですが、油断できない時があります。ウィル様の件が、そうでした」

「まだ、覚えているんだ」

 この言葉により、アルンはセシリアの新しい一面を知った。それは、根に持つタイプ。それも自分が好きな人物に、特別な執着心を持つ。そして上げられる人物の名前は、ウィルとユフィール。この二人を一緒にするのなら、どのようなことでも遣って退けるに違いない。

 いや、その原因を作っていたのはアルンであった。アルンがもう少し真面目な性格の持ち主であったら、セシリアはこのような性格になっていなかっただろう。しかし、アルンの性格は変わらない。

「覚えております。アルン様の行いは、他者に迷惑をかけております。少しは、他人を思いやってください」

「思いやっているとも」

「いえ、それは違います」

「セシリアだって、特定の人物を贔屓している」

 その言葉に、セシリアの眉が動く。確かにアルンの言うように、セシリアは特定の人物を優遇している。だがそれによって、迷惑を被っている人物はないない。寧ろ、その意見に同意する者が多い。被るという立場でアルンが当て嵌まるが、それは自業自得によるもの。

 気に入らなければ強大な権力を用いり、相手をぶっ潰す。言葉には出さないが、多くの者が恨んでいるだろう。

 だからこそ、多少の罰は必要だ。よって今回の両親の件は、周囲の者にしてみたら「いい気味だ」と、思ってしまう。罰は罰でも肉体的な罰ではなく、精神を著しくすり減らす罰。
 
 アルンに虐められた人物が先程の光景を見ていたら、腹を抱えて笑うだろう。あのふんぞり返って威張っているアルンが、タジタジになっているのだから。これほど面白い光景はない。

「アルン様より、いいと思いますが」

「何故だ」

「何度も申し上げますが、アルン様は度が過ぎるのです。少しの事柄で済むことを大げさに捉え、倍以上にして返します」

「当たり前ではないか」

「それが困ると、申しているのです」
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