ユーダリル

 しかし、サボり癖の強いことで有名な社長。一回の説教で、効果が出るわけがなかった。だが、一回で改善しようとは思っていない。それにより、毎日のように聞かせていこうと決意した。


◇◆◇◆◇◆


 一方のウィルは、ユフィールと食料の買出しに行く。ディオンに全ての食材を食べられてしまった結果、残っているのは調味料だけ。それにより、大量の食材を買い込むことになってしまう。二人は、苦労を苦労と思っていない。それどころか、買い物を楽しんでいた。

 恋人同士の二人。

 その表情は、緩やかだった。

 しかしユフィールは、ひとつだけ気掛かりなことがあった。それは、アルンから貰ってきた小切手。ユフィールは書かれていた数字に驚愕したのか、逆に不安感を抱いてしまう。恐る恐る、ウィルにそのことを尋ねてしまう。それだけ、アルンから貰った金額は多かった。

「平気だよ」

「で、ですが……」

「兄貴の好意は、受け取らないと」

「……はい」

 今回の件で、ユフィールはアルンが会社の社長だと再認識する。失礼ながら、普段はそのように思ってはいなかった。秘書のセシリアの説教を受けているのを知っているので、悪いイメージの方が強かった。だが、簡単に大金を弟に渡す。やはり、アルンは社長だった。

 だが――

 瞬時に、認識を改めることはできない。それだけ、セシリアに怒られているアルンの印象が脳裏にこびりついている。意見は、ウィルも同じ。それにより、二人は一緒に笑い出していた。その後、面白おかしく買い物を続けていく。帰宅後は、仲良く並んで食事を作った。

 今回の出来事で、二組のカップルはそれぞれの道を突き進んでいく。アルンとセシリアは更に力関係がハッキリとしていき、ウィルとユフィールは今以上に愛情が深まっていったという。
< 179 / 359 >

この作品をシェア

pagetop