ユーダリル
悪友への道

 年に二度行なわれているオークション。ユーダリルに暮らしている金持ちは勿論、別の土地からも参加者が集まってくる。その為、オークションが行なわれる日は、いつも以上に賑やかだった。

 ウィルとゲーリーは、オークション会場に続く道を歩いている。今日は、ディオンと一緒ではない。その理由として、オークション会場にディオンと一緒に行っては邪魔になってしまうからだ。

 今ディオンは自宅で、ユフィールと仲良くお留守番をしている。最初は物凄く嫌がっていたが、最近は物分りが良くなってきていた。お陰でゲーリーと一緒に、出掛けることができた。

「金は、平気なのか?」

「貰った」

「ああ、代わりだったね」

「何が何でも、落とさないといけない。もし落とせなかったら、後で何を言われるかわからない」

「苦労しているね」

「お互い様だ」

 ゲーリーもアルンの性格を熟知してきたのか、ウィルと肩をポンっと叩く。同情たっぷりの言葉だったが、同じ状況に置かれているゲーリーからの言葉なので、特に反論することはなかった。

 すると今度は、ウィルがゲーリーの肩を叩く。そして互いに同情し合い、慰め合っていく。

「仲間」

「仲間だね」

「近くにいた」

「凄く、近くだよ」

「正直、驚いた」

 二人ともユーダリルの中で暮らしていて、同じ職業に就いていた。出会ってから数日前まで、ゲーリーが一方的に喧嘩を売り、ウィルが綺麗に横に流していたのだが、今では実に仲がいい。

 これも、互いの共通点を見付けた為だ。特に兄弟で苦労している点は大きく、時折愚痴り合う。

 溜まりに溜まった、不平不満とストレス。それを外に出せる切っ掛けを手に入れた。現在、二人の関係は友人から親友へ変化しつつあった。過去の出来事は嘘のように明後日の方向にぶっ飛び、以前の二人のやり取りを知っている者達は、急激な変化に驚いているという。
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