ユーダリル
すると好奇心が疼きだしたのか、耳をすませプロポーズの内容を聞いていく。なんだかんだで、ウィルも気になっていた。一方ディオンも二人の会話が気になるのか、同じように耳をすます。
ディオンはちょこんっと可愛らしく座ると、両方の耳をピクピクと動かす。刹那、両耳が止まった。
野生の勘で二人の雰囲気が変わったことに気付いたのか、プロポーズの現場に乗り込もうとする。だが、寸前でウィルに止められた。今飛び出したら、今回も失敗してしまうからだ。
ウィルはディオンの首に抱き付き、必死に抑える。何が何でも、成功に導かないといけないからだ。
その時、アルンの歓喜の悲鳴が上がった。
どうやらプロポーズに成功したのだろう、ウィルはホッと胸を撫で下ろす。これで、平穏が訪れるからだ。
「一安心だ」
誰もが、そのように感じるだろう。
それだけ、今回の件は喜ばしいことであった。
ウィルは二人に気付かれないように、心の中で喜ぶ。だが、空気が読めないディオンは飛び出し、アルンとセシリアの間に立つ。
突然の行動にウィルは慌てて飛び出すが、セシリアと目が合った瞬間、全身が硬直してしまう。彼女の方も、まさかウィルがいるとは思わなかったのだろう、何処か恥ずかしそうにしている。
「……聞いていた」
「えっ!?」
「お前!!」
アルンの怒鳴り声と、セシリアの焦った声音が響く。そのそれぞれ違う反応に、ウィルは必死に謝っていく。
しかし、それ以上大事には発展しなかった。アルンもプロポーズに成功したことが相当嬉しいのか、怒鳴り声を上げたが何処か機嫌がいい。その証拠に、照れた素振りを見せていた。
「えーっと、おめでとう」
「有難う」
「セシリアさんも、おめでとう」
ウィルは二人に、祝いの言葉を言っていく。それに対しセシリアは素直に受け止め、顔を赤らめつつ礼の言葉を言う。だが生来の天邪鬼のアルンは、言われて当たり前という感覚があるのか、いつもの威張った態度を取る。そして一言「ウィルは結婚しなくていい」と、爆弾発言を言った。