神楽先生には敵わない
たった四文字でこんなに心臓が早鐘のように鼓動してしまうなんて。
「…みちる?」
私の異変に気づいた先輩は横から声をかけてきた。
「どうした、急に顔真っ赤にして」
「あ、いや、別に…先生が今からネームを見て欲しいと…」
私のおどおどした態度と赤面した私の顔を見た痺れ先輩は、
突然私の手から携帯を取り上げ自ら自分の耳にあてた。
「ちょっ!!」
「ーーー先生、もうこっちはタイムカード切ってます。仕事なら明日に回してくれますか?」
いきなり携帯を奪われ慌てて取り返そうと目一杯背伸びしても、
伸ばした腕は簡単に払いのけられ太刀打ちできない。
そして一方的に先輩は着信を切ってしまったのだ。
「もう仕事終わってるんだから、そんなもの明日に回せ。時間外勤務だ」
怒った表情で私を見下ろしながらほれ、と携帯を私の胸元へ押し返す。
「担当だからって先生に都合のいいように振り回されるな。わかるか?」
私は先輩の言葉を聞きながら受け取った携帯を握りしめるも、
頭の中は先生のことでいっぱいだった。
”会いたいんだ”