神楽先生には敵わない
「ありがとうございます!」
肩をポンポンと叩きながら自分のデスクに戻る編集長に返すと、
再びパソコンに目を向け仕事を始める。
――仕事終わったらすぐ美容院行って、着付けしてもらってから、
七時に駅前集合だよね、よしよし…!
朝からフル活動する理由。
それは紛れもない先生と出かける花火大会に行く為だ。
レンタル浴衣も借りてすぐに美容院予約して、
この日の為に髪飾りや小物だって一式揃えてきた。
あの時は冗談めいた口ぶりだった先生が二日前ぐらいに、
「じゃ七時に駅前で待ち合わせしようね」
とニッコリ笑いながら呟いた。
きっとその場限りの言葉なんだろうな、と内心寂しかった私にとって、
先生の気持ちは素直に嬉しかった。
――絶対に完璧に仕事終わらせてお洒落して、
いつも子供扱いする先生を見返してやるんだ…っ!!
グッと握り拳しながら瞳の中の情熱がメラメラ燃え上がる。
今までに見たことが無いぐらいのやる気オーラを放つ私に、
編集長ど周りの同僚は目を見張りながら若干引いていた。