ポーカーフェイス

「はいオッケー!」


 監督がそう言ったと同時に、現場での張りつめた緊張感は、一瞬にして解けた。


「ふぁ…」

「なーに、呑気に欠伸なんかしてんだよ!」


 苛立ってい男役の男が、欠伸をした男に問う。


「ん~?最近退屈でさぁ」

「で、なんで欠伸なんだよ?」

「眠れないんだって」

「わー、確かに目の下のクマ酷いかも?」


 じーっと欠伸をした男を見つめるのは、苛立った男を止めに入った男役の男である。


「あ、ねぇ、監督に呼ばれてるよ、乙津くん」

「ん?あー、ありがとう」


 そう微笑んだのは。


「乙津悠翔。……あいつ変わったよな」

「だね」

「なんかあったんかなぁ?」

「しーらね」


 変わった。

 そう。悠翔の雰囲気が。

 今までツンツンしていたのが。

 急に。

 ある事を境にしていたのだが。

 態度や雰囲気がガラリと変わった。


「乙津くん」

「はい?」

「なんかあったの?」

「いえ?」


 聞いても返事はいつもこれだ。

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