ポーカーフェイス

「悠翔」

「あー?」


 にらめっこを続けていた尋翔が、顔を上げて言った。


「この後、なんかある?」

「さー?」

「監督に聞いて来い」

「あぁ?んどくせーなぁ…」

「いーから!」


 尋翔は悠翔の背中をぐいぐいと押し、監督の前まで連れて行った。


 めんどくせぇなぁ…。自分で聞けや。ったく。


 とかなんとか愚痴りながらも、悠翔は監督に、この後も撮影を続けるのかと訊いた。


「あー。どうしよ…っかぁ…。乙津くんは?この後何か用でも?」

「あ、まぁ、はい」

「ん、そっかそっか…。じゃ、乙津くんは上がっていいよ。お疲れ」

「あ、はい。お疲れ様です」


 素っ気ない監督の反応に、少しだけ目を丸くさせながら、悠翔は尋翔の元へ戻った。


「なんて?」

「お疲れーって」

「ん。じゃ、帰るか」

「おぅ」


 短い会話を終えて、2人は局を後にした。




 
< 16 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop