ポーカーフェイス

 泣き止んだ尋翔と肩を並べて、悠翔は家路についた。

 少し肌寒く、ポケットに手を突っ込む悠翔。

 と、右手に何かが当たった。


「ん?」


 取り出してみると、


「あ」


 写真だった。

 音乃と廉、そして牡丹の写真だった。

 
「なんだ、それ」

「あー。なんでもねぇ」


 グシャッと握りつぶして、それをポケットに戻した。


 あれ、牡丹、さん……。

 って、誰だ?

 牡丹、音乃、要次。
 
 誰………だ。


「おい!どうした!」

「ぇ…あ…?わ、悪ぃ」

「大丈夫か?お前」

「目ぇ、真っ赤に腫れ上がった人間に心配されるなんて、俺も落ちぶれたか」

「あーーーーっっ!!るせぇ、るせぇ、るせぇ!!」


 脳内でループする名前に悩んでいたら、横からヒョコッと顔を出した尋翔は、悠翔の顔を心配そうに見つめていた。

 弟に心配されるなんて心外で、ひょっこり出した尋翔の頭を軽くはたいて、悠翔は軽口を叩いた。

 こんなやり取りをやったのは、久しぶりで、なんだか懐かしい気さえした。


「お前の憎たらしさは、マジで折り紙つきなのな」

「まぁな」

「威張んな、バカ」

「るせぇや、バカ」


 懐かしいんだ。この感じが。


< 81 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop