ポーカーフェイス
「大丈夫…ね」
「…ん」
目線を合わせた翔汰は、目が腫れ上がった夢子の頭を撫でた。
なぜだか、哭いている間鮮明に蘇った、夢子と翔汰の出会いから、付き合うきっかけまで。
目の前で、儚く笑う翔汰のその笑顔は、その頃から全く変わっていなくて。
「…ふ…っ」
また、ポロリと零れる夢子の涙。
「えっ?!泣かないで!?」
「わり……ぃ…」
焦った翔汰はもう1度、夢子を優しく抱き寄せた。
「…」
俺は…どうすればいいんだろうか。
階段の下で、尋翔は思った。
なぜ、母が泣いているのか。なぜ、父親は母を抱きしめているのか。なぜ、父は母と結婚したのか。なぜ、尋翔は、
俺、は…。
悠翔になれないのだろうか。