先生と私と元彼と。
第十四話†新たなる問題と私の居場所
『芹葉、家に寄ってく?』

舷には前以て話してあった。

「ぇ、いいの!?」

目をキラキラさせて
嬉しそうに芹葉が訊いて来た。

以前、一雅君が
家に来た話をした時に
芹葉が拗ねたことを舷に話したら
今度連れてくればいいと
何でもない事のようにサラッと言った。

教師として、
それはどうなんだ? と思うけど
そういう性格なんだとわかっている。

『舷がいいって
言ってたから大丈夫だよ』

くだらないことやいじめなど、
そういったことには怒るが
普段は学校でも家でもあまり変わらない。

今日は職員会議が
長引きそうだと言っていた。

『舷は職員会議で
遅くなるって言ってたから
二人でごはん、食べちゃおね』

時計は七時半を指している。

舷が帰って来たら、
芹葉を送ってもらうつもりだ。

「いいのかなぁ、
家主である先生を
差し置いて、夕飯食べちゃって……」

真面目っていうか、優しいっていうか……

『大丈夫だよ。

舷には言ってあるし
芹葉の帰りが遅くなると
いくら連絡してるとはいえ
お家の人が心配するでしょ?』

普段、門限を付けているような家だ。

うちとは、正反対で
芹葉は溺愛されている。

タイムリミットは九時だ。

「うん。

じゃぁ、先生には
悪いけど、いただきます」

今日の夕飯は芹葉の
リクエストでナポリタと簡単なサラダだ。

「美味しい」

その言葉にホッとした。

やっぱり、舷以外に
料理を出すのは緊張するなぁ。

『よかった』

この前、一雅君に
出した時も緊張したんだよね。

食後のお茶を飲みながら、
話していると、舷が帰って来た。

『お帰り』

「お邪魔してます」

私と芹葉がそれぞれ
言葉を発するが
舷は無言のまま、私に
鞄を渡して、洗面所に行った。

「先生、なんか疲れてない?」

その台詞に私も頷いた。

職員会議で何かあったのだろか?

舷は着替えをしてからリビングに来た。

私は舷のご飯の用意をしながら
会話に参加した。

『実はな』

夕飯にも手を付けず深刻な顔をしている。

芹葉も舷が
話し出すのを黙って待っている。

一体、何があったんだろう?

『悪い椛』

何が?

『俺達の関係が糸村にバレた』

はぁ!? 何で!?

私達は学校では
一切そういうことをしていない。

なのに何で……

芹葉も驚いている。

学校内で私達の
関係を知っているのは
芹葉と一雅君だけだ。

『お前達三人が
仲良くなったあの日
糸村が何処からか聞いてたらしい』

ちょっと待って……

あの日は誰もいないのを
確認してから二人に話したはず。

しかも、学校の近くとはいえ
校外で話していたのに
糸村は何処からか聞いていた?

「待って先生
私達がその話しをしてたのは
風華(かざはな)公園だよ。

彼処にも隠れる場所なんてないよ……」

芹葉の言うとおり
あの公園に隠れられる場所なんてない。

トイレもないような小さな公園だもんね。

本当に小さな公園で
遊具も二、三種類しかない。

糸村は何処で知った?

あの日に知ったということは……

その時、私の中で
常識では考えられない仮説が浮かんだ。

もしかして‼

部屋へ行き、鞄をひっくり返した。

やっぱり‼

何時入れられたんだ?


『理由がわかったよ』

鞄に入っていた“あれ”の
残骸を持ってリビングに戻った。

『え!?』

芹葉が吃驚するのも無理ない。

“あれ”とは“盗聴器”なんだから。

『ほぉ~

俺に喧嘩売るとは
いい根性してんじゃねぇか(ニヤリ)』

あらら(笑)

いい笑顔だ(ニヤリ)

多分、前々から疑っていたのだろう。

しかし、盗聴器を入れる
タイミングが掴めなかった。

だけど、あの日は文化祭の準備で
貴重品は制服のポケットに
入れていたけど鞄は
机に掛けっぱなしだった。

教室には作りかけの
セットがあったからお昼は
それぞれ別々で誰も居なかった。

その隙を狙ったんだろう。

「先生、どうするの?」

犯人は糸村だろうけど証拠がない。

『まぁ、任せとけ(ニヤリ)』

舷に任せるとしよう。

『わかった』

話は一旦終わらせ
芹葉を送る準備をした。

『とりあえず、
青沢を家に送るのが先だ』

「先生・椛
今日はありがとう。
また、椛のご飯食べたいな」

嬉しいな♡

『何時でも食べにきな』

あら、私が答える前に
舷が答えたね(笑)

「芹葉、また明日ね」

私達はマンションに帰った。

さて、私が壊したとはいえ
盗聴なんて面倒なものを………

しかも、わざわざ
舷に話たらバレるって気付かなかったの?

それとも
通報されても証拠がないから
言い逃れると思ったのか……

どれにしろ馬鹿だよね。

『椛は今まで通り普通に過ごせよ』

勿論♬*゜

『わかってるよ』

明日から糸村は
どう動くかな?(ニヤリ)

楽しみだ。

+★+。。。+★+。。。+★+。。。+★+。。。+★+


『おはよう、舷』

何時も通りに起きて朝食を作る。

『おはよう、椛』

平日の朝食は二人で食べる約束。

此処に来た頃は色々新鮮だった。

誰かのためにご飯を作ったり
誰かと一緒に食事をしたり
“一人”じゃないことが
一番新鮮で不思議だった。

何時だって“一人”だったから。

家に帰っても“お帰り”と
言ってくれる人はいないし
食事の時に話をする人もいなかった。

だから、こうして
舷と一緒に居られることが
私の幸せなんだ。

だからこそ、
親父だろうと元彼だろうと
糸村だろうと絶対に奪わせない‼

私が幸せで居られる場所を。
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