ちょっと斜めな“おとぎ話”(短編)
「はーい。――――あ、あなたは!!」
出てきたのは、とてもとても一国の王女には見えない薄汚れた女。
しかし、その顔は確かに王子の探していた姫である。
「何をしに来たの!?」
薄汚れた姫は、嫌そうな顔を隠そうともしない。
「君を連れ戻しに来たに決まっている。あの男も死んだそうだな?」
王子は険しい表情で言い募る。
「冗談じゃないわ!
確かにあの人は2年前、流行病であっけなく死んでしまったわ。
……でも、わたしはここを動かないわよ!」
「いい加減にしてくれ!!
君の勝手な行動のせいで、どれだけ皆が苦労したと思ってるんだ!
僕は君を連れずにして国には帰れないんだ」
王子は、彼との婚約発表パーティーの夜、台所番の男と駆け落ちした姫をじろりと睨んだ。