ラブソングは舞台の上で




1月4日、仕事初め。

すっかり休みボケに陥っている体に鞭を打って出社すると、ハイテンションな詩帆さんに捕まった。

「明日香ーっ! あけおめ!」

「明けましておめでとうございます。随分ご機嫌ですね」

「パリで年越し、最高だったの〜」

真新しいヴィトンのバッグを抱え、エルメスのスカーフを巻いている。

よく見ると履いてるパンプスも、年末に雑誌を見ながら欲しいと漏らしていたルブタンだ。

一体パリでおいくら万円使ったのだろう。

「リッチでうらやましいです」

会社からもらっている給料はあまり変わらないはずなのに、独り暮らしと実家暮らしでこの貧富の差は何なのだ。

「はい、お土産」

「いつもありがとうございます」

ヴィトンから出てきた箱には、黒地に白のココマークがあしらわれている。

中身はコンパクトミラーだった。

詩帆さんは海外に行くと、いつもちょっぴり高級なお土産をくれる。

今使っている香水も、昨年詩帆さんからお土産に頂いたものだ。

今年は何もお返しができず、申し訳ない。

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